- 1994年
父親(58歳)が息子(25歳)に聞かせて来た話をもとに、カリフォルニアトーランスの街で小さなお店を開きました。そのお店の名前は「Based」
- 1998年
「世界中で見つけたいいもの」をコンセプトに小さいながら細々と営業していたなか、63歳という若さで父親が病気で倒れます。街の医者が突きつけた現実は「あと1年もつかどうか」という厳しいものでした。
父親への想いで始めたSHOP「Based」。あと1年しかないと聞かされた息子は悩みました。
「父さん、心配しなくても僕はこんなに大きくなったよ」ただそれを言いたいがために。あと1年という短い時間、普通であれば一緒に過ごしたいと思うのですが、彼が取った行動は違いました。
「父さんが見て来た世界中のいいもの、そして世界中で生まれた出会いを、僕自身が体験してこの想いを完全に受け継ぐ」と言うものでした。病に倒れた父と、それを看病する母にその想いを伝えた結果、両親は優しく彼を送り出しました。
父も大きくなって帰って来る息子と再会するため、それまで頑張ると決心します。
- 1999年
父が聞かせてくれたアジア、ヨーロッパ世界各国のいいものや沢山の出会いを巡って来た息子は帰ってきました。父の病は進行していました。つらい状況のなか誰よりも彼の帰りを待っていた父親はとても嬉しそうな表情で息子を迎え入れました。
小さい頃から聞かせてくれた、父親の世界中の話。
今度は、父へ息子が沢山の世界中の話を聞かせました。病床のなか父は嬉しそうに聞き入ったそうです。
- 2000年
年が変わってすぐ、父親は天国へ旅立ちました。いろんな経験をして来た息子と世界中の話が出来た父親の最後はとても安らかだったそうです。
相変わらず小さなSHOP でしたが、沢山の「いいもの」を取り扱い、その一つ一つには「いい出会い」があります。彼は、お客さんに父の経験と自分の経験を嬉しそうに話したそうです。
「これはカンボジアで知り合った友達が作っているんだよ」
「これはインドで知り合った職人が一つ一つ丁寧に作ってくれてるんだ」なんて話を嬉しそうな顔で。
- 2017年
ある日突然、店のシャッターに「CLOSED」という張り紙が貼っていました。
数日たっても、数ヶ月たってもお店が開店することはありませんでした。誰もが不思議に思っていたのですが、数ヶ月もすれば誰も気に留めなくなりました。そんななか彼の消息を知っている唯一の人間がいました。
小さい頃からの幼なじみの彼はこう言いました。
「あいつなら世界中を旅してるぜ。こんないいものを見つけたよ、こんなヤツと出会ったよってたまにメールがくるぜ?本当にたまにだけどな。」じゃあ彼はどこにいるの?と聞くと彼は笑いながらこう答えました。
「知らねえよ!地球のどっかにいるんじゃねえの?まあ、元気なのは確かさ!」
- 現在
今も時々世界のどこかから、彼のもとにこんな「いいもの」があるぜとメールが来るそうです。そのメールを見るたびに彼は思います。
「どこにいるかなんてどうでもいい。楽しそうならそれでいい」と。「いいものと、いい出会い」
小さな街の小さなお店は、気づけば地球丸ごとお店にして今もどこかで「いいものと、いい出会い」を探しています。